高梨沙羅のソチの時間は無情にも終了…しかし工藤アナがそれを救った
女王高梨沙羅のメダルはなかった。結果だけを見ると4位という順位はあまりにも物足りない。彼女のソチでの時間はあっけなく終焉を告げた。2本とも追い風で不利な条件だったとはいえ、加点がもらえることを考えればそれも言い訳に過ぎない。それよりも何よりもこれは大会を通じて言えることだが、NHK工藤アナの一つ一つのコメントが非常に印象的だった。
上村愛子の場合
工藤アナは1988年のカルガリー冬季五輪から13回の五輪放送を担ってきたベテランキャスターだ。長野五輪では原田選手の前回大会(リレハンメル)の失敗ジャンプを加味して、2回目を「因縁」と表現したり、その後着地する時に「立ってくれ!」と叫ぶなど数々の名言を残している。その二人が女子ジャンプの解説をしているというのは不思議な感覚だ。
さて、上村愛子4位の場合これは順位こそ高梨沙羅と同じだが、メダルを取っていてもおかしくなかった。最速タイム、滑りの安定性をみれば明らかだ。ほとんどの人が4位に納得がいかなかった。八百長ではないかという声も出たほどだ。しかし、工藤アナは違った
「私たちのメダルへのこだわり…」このコメントでまず国民の気持ちを代弁した上でこう続けた「…それを超えた彼女の滑りがありました」
メダルを逃したという事実は変わらない。しかし、上村愛子はインタビューの中で全く悔いを見せていなかったし、「嬉しい」「清々しい」とまで言った。その彼女の気持に敬意を評して工藤アナはコメントしたのだ。包容力のある素晴らしいコメントではなかろうか…。
高梨沙羅の時はどうだったか
誰もが金メダルを取ると思っていた。それはもちろん工藤アナも同じだったはずだ。高梨は「何か普段と違った」「感謝の気持でここまできたがすごく残念」とも語った。この時、工藤アナは現地インタビュアーとして直接高梨沙羅とやりとりをしている。
「どうだったですか?」と優しく問いかける工藤アナ。その物腰や言い方などに選手は救われ、他の2選手は涙を抑えることができなかった。インタビューというのは予め用意された原稿に基づく形式的なものが多い。しかし、工藤アナは現地の雰囲気を加味しながら間を取り、選手が話しやすい土台を作っていた。
「がんばりましたね」この言葉に選手はどれほど救われただろうか。そして、インタビューの後のコメントも非常に印象的だった。競技後の彼女たちの状況を簡単に説明した後にこう言った。
「インタビューをしたそれぞれの選手に、涙がありました。」言葉だけを見れば単に事実を言っただけに過ぎない。しかし私自身このコメントを聞いた後自然に涙がこぼれた。
解説者の原田さんのフォローも良かった。「彼女は絶対言い訳しないと思うので、僕が言います。高梨選手の時だけ追い風が吹いてしまいました。2本とも。」こういう言葉を専門的な解説者が言うからこそいい響きを伴う。原田さんの解説全体も、ソチで初の女子ジャンプが開催されたという事の意味を加味しながらの、温かいものだった。
工藤アナと原田さんが解説することで競技というよりも「温かく見守る」ということがいかに大事かを考えさせられた。もちろん、競技であり結果がすべての世界だが、それを超えた二人の包容力があった
今日のまとめ
「勝ち負けだけがオリンピックではない」工藤アナの解説を聞いてそう思う。これからオリンピック中継は、競技そのものを楽しむ他に、工藤アナのコメントにも注目したい。
高梨沙羅の書籍
訂正:長野オリンピックの団体戦の解説は和田アナでした。お詫びいたします。情報を提供してくださった方、ありがとうございました。
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長野団体は和田アナです
工藤アナは個人戦