コートジボワールのドログバを英雄にさせてしまった4年前の日本【観戦記】

2014年6月24日

 日本がコートジボワールに負けた。後半わずか2分の間で取られた点はすべて右サイドから。しかし、日本のサポーターは惜しい試合と誰も思わなかったのではないだろうか…。日本の攻撃的サッカーが完全に潰されていた。

再三潰された本田圭佑のストロングポイント

 「フィジカルの強い相手でも決して負けることのないキープ力」

 これが本田圭佑のストロングポイントであり、日本の生命線だ。本田がキープすることで溜めができ、空いたスペースに走り込める時間が作れる。

 溜めを作ることで前を向いてプレーできる選手が増える。足元での早いパス回しで連動性をもたせればアジリティのある日本の良さが活きる。

 …見た限りではそこがことごとく潰され、逆に相手が完全にボールを支配し、パスを回していた。

 完敗である。

 本田は試合後「前半硬さがあった」と言った。確かに落ち着いて考えれば、日本のシンプルなパスサッカー、スピードのある動きにコートジボワールの選手はついていけてなかった印象もある。

 そういう意味で、本田がもたらした先制点は絶妙なタイミングだったと言っていい。そこで、硬さが取れ本来の日本の動きが出てくるだろうと期待していたが、まだバタバタして足元にボールが収まらないでいた。

 日本がボールを持てば何かが起きる…そういうワクワクするような時間が後半の最後になって少し見えた以外になかったのは残念としか言いようがない。

 本田が機能しなくなった時日本はどうすべきだったのだろうか…。

完全に勢いをつけた英雄の登場

 本田が本来すべき事をドログバは簡単にやってのけた。それが経験の差なのだろうか…。

 圧倒的な存在感によってここまでチームが躍動するのかというほど、チーム全体が活性化していた。後半の立ち上がりを終え、そろそろきつくなってくる時間帯に交代をしてきた采配も良かったのかもしれない…。

 それでも後半チャンスがないわけではなかった。左サイドが潰された分右に走りこむスペースが生まれ内田が何度もチャレンジしていたのは日本にとって収穫だと感じた。

 本田がダメなら香川と長友で崩せる…そこがダメなら内田の右サイドがある…。

 攻撃の選択肢という意味では、内田が躍動していたのは今後につながるかもしれない。

 ただ、監督の支持が明確に伝わらなかったのか、香川と岡崎が入れ替わるという前代未聞の事態が起きた。大久保は試合後「監督の指示が分からず混乱した」と言っていた。

 確かに、観ている方も「何がしたいんだ??」と思ったのではないだろうか…。

 何がしたいんだで言えば「結局のパワープレー」に納得がいかない。どうせ負けるなら日本らしく最後まで自分たちのサッカーをして負けて欲しかった。吉田麻也が前線に張るぐらいなら、柿谷と交替すべきなのは香川ではなく山口螢ではなかっただろうか…。

 それのほうが2列目の選手の選択肢が広がり、攻撃に人数がかけられる。大迫と柿谷が裏へ抜け出す…そんなシーンをワールドカップで見せることがこの4年で進化した日本の姿ではなかっただろうか…。

 どんな状況でも自分たちのサッカーを貫くその気持ちが欲しかった…。パワープレーをしてしまったら4年前のディフェンシブなプレーでしか世界と戦えない日本に逆戻りになってしまう。

 最後まで自分たちのサッカーをして欲しかった。長谷部キャプテンはそれができなかったと言った。それがなんとも歯がゆい…。

 内田は

 「その2分で、この4年を無駄にするのはもったいないと思いますし、チームとしてはもう1回、次のギリシャ戦に全力で向かうことだけだと思います」

 と言ってくれた。コートジボワール戦のここがこうだったとかもう止めにして、次の試合が初戦ぐらいの気持ちで望んだほうが良いのかもしれない。

 吹っ切れた日本の底力は、4年という時を経て確かに進化したというシーンをギリシャ戦では見せて欲しい。

 その時に、南アワールドカップの本田のような英雄が日本選手の中から出てくるに違いない。