【鹿の王】のあらすじ、感想、ネタバレ情報「やはり上橋菜穂子作品は凄い」
本屋大賞2015年の大賞が「鹿の王」に決まりました!
前評判通り上橋菜穂子さんの作品でしたね。
今回のノミネート作品もどれも「あ、なるほどな」というものばかりで、どの作品がとってもおかしくはなかったと思います。
2位のサラバ!。3位のハケンアニメ!も面白い作品のようです。
あらすじ
鹿の王は小さなノーベル文学賞とも呼ばれる「国際アンデルセン賞」を日本人で2人目に受賞した上橋菜穂子作品です。
彼女は作家だけでなく人類学者として活動し、その作風には人間の起源が反映された独特のものになっています。
鹿の王は、死に至る謎の病に侵されたが一命を取り留めた男を主人公ヴァンに、生命の神秘から、異なる価値観の民族や国家の衝突、さらには先鋭化した部族の凶行までも描いた意欲作です。
上橋菜穂子さんは鹿の王について
「命を救うことはできないが、暮らしをあたたかくすることはできるかもしれない」
こういう思いで作品に向かったといいいます。
そのせいか、残虐性というよりもどこか人間賛歌の意味合いが作品全体に込められているような気がします。
また、児童向けでもある内容ですが、医療関係の文献を読み込み、医者であるいとことの綿密なチェック作業を経て完成させただけあって、もの凄く内容の濃いものに仕上がっている事も特徴のひとつだと思います。
鹿の王のあらすじについてはKADOKAWAさんがYoutube上でPVを作成しておられますのでそちらをどうぞ。
本屋大賞は受賞すると大抵クロスメディア化されコミックや、映画、テレビドラマなどで楽しめる作品が多いです。
すでに上橋菜穂子さんの代表作「精霊の守り人」はコミック、アニメ、ラジオドラマになっていますし、2016年より女優・綾瀬はるか主演でNHKにて「大河ファンタジー」と銘打ちドラマ化も決まっています。
そういう意味では鹿の王にも期待したくなりますね。
以下は上橋菜穂子さんの受賞後のコメントの抜粋です。
生まれて初めてのアルバイトが書店員で、本屋さんと一緒に生きてきたような人生です。そんな、読者と本の懸け橋である本屋さんに選んでいただき、ほんとうにうれしい…。
私にとってはこれ以上ないタイミングでいただけて、何よりの勲章です。まるで、暗夜の中にいたのが、パッと明るさが差し込んで来たような気がしました。
長く続けた<守り人>シリーズ、『獣の奏者』シリーズを書き終えたあとは虚脱状態で、いわゆるスランプに陥っていましたが、その期間を経て執筆した『鹿の王』は、ちょうど変わり目、転換期に執筆した物語です。読んだ人が、『ああ、楽しかった』と思える物語が、物語の原点だと思うので、これからもそうした物語を書いていけるようがんばっていきます
感想
上村ワールドはやはり凄かったというのが率直な感想です。
と同時に私が読み手として愚かなせいか、「児童書ですが結構難しいな」という印象を持ちました。
物語の根幹となっている黒狼熱を巡りヴァンとホッサル、全く境遇が異なる2人が出会い話をし共感していき、最後にヴァンがサエの声を振り切り森に駆けていく…。
ファンタジーなのにファンタジーではない、今この時起こってることを突きつけられているような重いテーマでした。
一方で、読後にその後のヴァンとユナが出会い幸せになるのだろうか…。
などと思いめぐらせていると、決してバッドエンドではない生きることの素晴らしさを謳っているような気持ちになります。
いずれにしても上橋ワールドに十分に浸れ、ラストは涙なしでは読めない、そんな作品であることは間違いありません。
ネタバレ
感想のところでも少し触れましたが、最後にヴァンがサエの声を振り切り森に駆けていくシーンになぜ「鹿の王」というタイトルが付けられたのかがわかったような気がします。
まさに鹿の王のように、自分のなせることを、己の人間性を捨てる覚悟で森の奥に消えていったヴァンに感情が動かされました。
住んでいた場所を追われ、理不尽な扱いを受けたことに復讐の炎を燃やす男たち。
そういう意味でオーファンたちの暴走は非常に恐ろしくもあります。しかし、そこに感情移入してしまうなぁと思います。
周りから見放され、追い詰められていく様に人間の持っている負の部分を感じて苦しくもありました。
時に病は理不尽です。その病気という敵に、くらいついていくホッサルたちの描写に上村さんの直情的な思いが反映されてとても魅力的だなと思いました。
読み手に考えさせるという意味では成功した作品であることは間違いありません。
しかし、鹿の王という小説だけで物語が完結するという事を考えると、まだ終わっていないんじゃないかなというのが正直なところです。
そこに次回作を期待している自分がいますね。
この作品をなぜ書店員さんが選んだのかが分かるような気がします。
きっと上橋さんに続きを書いてくれという期待が込められているのではないでしょうか。
「読んだ人が、『ああ、楽しかった』と思える物語が、物語の原点だと思うので、これからもそうした物語を書いていけるようがんばっていきます」
受賞後にこう語った上橋菜穂子さんの今後の作品が楽しみですね。
鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐ |
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本屋大賞2015年2位の作品
サラバ! |
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本屋大賞2015年3位の作品
ハケンアニメ! |
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